八方尾根スキー場にRed Bull がスポンサーとなってBMX のコースが造られるという。source は
信濃毎日新聞。
白馬八方尾根スキー場に自転車競技場が完成
愛好家らが同スキー場国際ゲレンデに造成した競技場は長さ約200メートル、幅約40メートル。ドイツとフランスのコースデザイナー2人が設計し、バンク(傾斜)やジャンプ台を十数カ所設けた。MTBとバイシクルモトクロス(BMX)の利用を想定している。
健康飲料メーカー「レッドブル・ジャパン」(東京)が造成に必要な重機やコースデザイナーの協力を無償提供した。ドイツやオーストリアなどで行っている競技支援の一環で、今回の支援は日本初。北海道ニセコなど全国15カ所から希望があった。
BMX のコースを「自転車競技場」と表現する信濃毎日新聞に思わず微笑む方もいるだろうが、本日のテーマはそこにはない。飲料としてみたRed Bull のRisk について。
Wikipediaでは概略が以下のように記載されている。
オーストリア産レッドブルは日本を含め世界145ヶ国で販売されている。主にカフェイン、ナイアシン、パントテン酸を含み法律などによって各国それぞれ分量の違いはあるが、日本で販売されている薬局で売るような栄養ドリンクとは異なるエナジードリンクとしてコンビニエンスストアなどで販売している。
同じくWikipedia には、Risk について、以下のような記述がある。
瓶に入ったタイ産のドリンク(写真参照)はオーストリア産のものとは品質が異なり、タイ国内で多量に服用した場合の危険性が指摘されている。
レッドブルはカフェインを含むため、またアルコールと混ぜた多量摂取による健康上の問題を重視したデンマーク、フランスなどでは、2004年まで同国内での販売を中止していた。レッドブルを含めた主な飲料のカフェイン含有量は以下の通り。
smart な人ならすぐに、このWikipedia の記述にはRed Bull Japan からの修正が入っている可能性が高いことを察知するだろう。「栄養ドリンクと異なるエナジードリンク」という記述は意味不明だ。また、オーストリア産のものとタイ産のものは異なり、片方にだけ問題があるような記述になっているが、最後のカフェイン問題はオーストリア産のことであり、それが記述されていない。
■指摘され続けているRisk食品関係で信頼できるsource である「
食品安全情報blog」を見ると、ヨーロッパでは以前から、そのRisk 表示の不足等について、指摘されてきていることがわかる。
たとえば5月1日にアップされているBfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)の報告を元にした「
エネルギードリンク評価のための新しいヒトデータ」では、以下のような要約がある。
過去にアルコールと一緒に飲んだり激しい運動の際に飲んだりしてエネルギードリンクによると疑われる死亡が報告されている。因果関係は証明されていない。科学者はエネルギードリ ンクの成分がその毒性作用をお互いに増強して健康影響を引き起こす可能性があると考えている。
また、5月21日付けの「
レッドブルと消費者」ではAFSSA(フランス食品衛生安全庁)の報告の要約が載っている。
2001年以降AFSSAはレッドブルについていくつかの意見を発表してきた。タウリンやD-グルクロノラクトンの含量などからAFSSAはこの飲料の安全性は保証できないと考えている。また栄養上のメリットも示されていない。
Wikipedia の記述だけを読んでいると、タイ産だけに問題があるように読めるが、実際は、オーストリア産についても、ずっと以前からRed Bull のRisk 問題は、食品の安全に係わる各国の政府機関によって懸念が表明されてきていることがわかる。
■イギリスでは2008年6月18日、Dailymailに「
Cynically marketed, toxic and disturbing: Why Red Bull is Britain's real drink problem」という記事が載った。簡単にいえば、Red Bull をカクテルに使って、泥酔する若者が多数出ていること、そして、それが原因と思われる死者もいることなどが書かれている。また、タイトルにも「Cynically marketed」とあるように、記事ではRed Bull のマーケティング戦略にも触れている。興味深い記述は以下になる。
・1987年にスタートして以来、取引高のほぼ30%をプロモーションに費やしている。(コカ・コーラはおよそ9%)
・ノルウェー、デンマーク、ウルグアイ、アイスランドで販売停止
・アイルランド、トルコ、スウェーデン、米国は懸念を表明。
・Facebookなどを使った、viral marketing(口コミ)を使う
・ノースカロライナ州 Wake Forest University School of Medicineのメアリー・クレア・オブライエン教授は、普通にアルコール摂取するよりRed Bull を使ったカクテル等は2倍、怪我や危害にあうリスクがあると報告
・カナダでは「子供や妊婦もしくは授乳中の女性、カフェインに過敏な人、またアルコール類と混ぜることなどは推奨されない」という警告文が印字されているが、イギリスでない、なぜだ?
■AFSSA(フランス食品衛生安全庁)の最新報告2008年7月15日、AFSSA の最新報告がsite の掲載された。重要な記述は以下になる。
・エナジードリンクは、マーケティング用語である。
・スポーツドリンクと混同してはならない。
・栄養的な意味は何もない。
・日常摂取量の5~500倍のタウリンやD-グルクロノラクトンの含量から、AFSSAはRed Bull の安全性を保証しない。
・高カフェインの告知が必要である。
・従って妊婦が飲むのは思慮のない行為である。
・アルコールとの摂取は、酔いの認知を鈍らせることが研究から分かっている。
・中枢神経系に影響を与えることも分かっている。
・BfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)も、最近、新しいレポートを出したが、AFSSA と同じ見解である。
・2001年から2006年の間にAFSSA が出した4つの見解に基づき、DGCCRF(経済・財政・産業省 競争・消費問題・詐欺防止総局)は、栄養的に無価値なRed Bull の販売許可を与えなかった。しかし、EU の自由貿易協定の基準に基づき、後に販売が認められた。
ポイントは、AFSSA という国の機関は、安全性を懸念しているが、EU 加盟国としての貿易流通上の問題から販売が許可されたに過ぎない、ということ。
■日本では折角の機会なので、セブンイレブンで買って飲んでみる。陳列は普通の清涼飲料水と同じ棚。味は、少しまずくしたオロナミンCかリポビタンDといったところ。さて、注意書きをみようと裏を見ると、赤く目立つ文字で書いてあるのは、宣伝文句のほうで、以下の文章は、一番最後に小さく書かれていた。
ご注意●カフェインが含まれています。お子様や妊婦の方、カフェインに敏感な方等は飲用をお控えください。
ここまで読んで頂ければ、整理するまでもないかもしれない。栄養もなく、スポーツドリンクのような機能性もない、興奮作用を促すいくつかの原料を溶かした砂糖水、というのが、Red Bull ということだ。そして、各国の政府機関がこれまで懸念を表明しつづけているRisk もある。こんな飲み物に、275円も出して飲む人がいるのだろうか? まったくCool じゃないね。少なくとも、販売の陳列棚への何かしらの工夫は必要に思う。