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大日岳遭難事故その後

文部科学省が設置した形式上の第三者機関である安全検討会の報告書がまとまり、それに対して「不十分」とする遺族が登山研修所を訪れたらしい。KNBニュース19日の報道は以下。

事故の教訓生かし再発防止を
2008 年 08 月 19 日 16:34 現在
平成12年に大日岳での冬山研修登山で大学生2人が死亡して以来、中止されていた研修登山が来年度をめどに再開されるのを前に19日、遺族が立山町の文部科学省登山研修所に対し事故の教訓を生かし再発防止を図るよう求めました。

 大学生2人の母親、神奈川県横浜市の内藤万佐代さんと兵庫県尼崎市の溝上洋子さんは19日、登山研修所を訪れ、長登健所長に対し、文部科学省と講師が「どのように判断を誤ったのか」を検証、公表して今後の研修に生かすよう求める要望書を手渡しました。

 要望に対し、長門所長は「検討会の提言に従い再開を目指して作業を積み上げていきたい」と答えました。

 有識者などから成る文部科学省の安全検討会は先月末、報告書をまとめましたが、その中でも遺族が求めている事故の原因究明は行われていません。 

 文部科学省では安全検討会がまとめた報告書をもとに来年度をめどに研修を再開することにしていて、具体的な研修内容については登山研修所が作成することになっています。



安全検討会がまとめた報告書は文部科学省のサイト「ここ」に掲示されています。事故を受けて設置された安全検討会でありながら、事故の教訓や事故に関連する改善すべき問題点が具体的に記述されていない不思議な報告書です。簡単にいえば、登山研修所を再開するための地ならしでしょう。8月初旬に報告書をまとめれば、補正予算に間に合いますから、再来年3月再開の目処が立ちます。ここで無視されたのは、失われた人命に対する誠実さ。


■経緯■
2000年3月文部科学省管轄の登山研修所が主催した大学山岳部リーダー候補生を対象にした冬山講習会で事故が発生し、二名の大学生が亡くなった。事故は、大日岳山頂付近に形成される雪庇の上で、27人が休憩している最中に、その雪庇が崩落したため。亡くなったのは二名だが、雪庇と一緒に落下した学生や講師も多数いた。

事故から一年後に、文部科学省が設置した事故調査委員会が報告書を公開したが、その大半を雪庇崩落の調査報告の記述にあて、雪庇崩落は予見不可能なので防ぐことができない事故とした。また、報告書には、現場講師の証言など声が入っていなかった。これに遺族側が反発、国家賠償法に基づく裁判が起こされた。

裁判は、講師を訴えるものではなく、国賠法による国の責任を問う形態となった。2006年4月富山地裁にて、遺族側の原告全面勝訴の判決。国が控訴し、引き続き争われたが、和解勧告が出され2007年7月和解が成立。その際、和解条項として安全検討会の設置があり、文部科学省が選任した委員による検討会が開催された。この8月に、パブリックコメントを収録しつつ、最終報告された。

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