混沌にあるガイド資格
【不透明なガイド資格】
日本でのガイド資格システムは非常に不明確です。有資格者と呼ばれる人の多くは技術試験などもほぼ無い様な形で資格と言う名の付く物を得ています。これと同じ資格を取得した人の中には筆記試験や実技試験を受けて取得した最近のシステム合格者のガイドも存在しています。
どこで見分けるの?・・・・・・・・・僕にも解りません。
もちろんフランスを始めガイド登山の先進国では今ガイドとして生活すている略全ての人が定めらえら内容や研修、試験を得て資格を取得しています。
不透明な資格になっている理由は、既得権を守ろうとしている人がいるからでしょう。
日本山岳ガイド協会が設立される以前、日本山岳ガイド連盟という組織がありました。連盟として資格発給をしていましたが、その内実は、連盟に所属する各団体がそれぞれガイドとして認めた人を、そのまま追認するような形態でしたからね。ですから、日本山岳ガイド協会に衣替えをした今頃になって、資格試験内容や研修内容を作っているのです。
江本悠滋氏が指摘しているように、この数年内で日本山岳ガイド協会の資格取得した人と、10年前に資格取得した人では大きな違いがあります。さらに、この数年内に資格取得した人であっても、日本山岳ガイド協会のプログラム自体がまだ未成熟ですから、一考を要します。
ある意味、若いガイドの方はかわいそうだと思います。山岳ガイドというのは素晴らしい職種ですが、それに見合った教育システムも内容も整っていないのですから。
【自由競争過ぎるガイド産業】
日本でガイドとして人を山へ連れて行き金銭を受け取る行為(事業)は特別資格を必要とはされていません。と言う事は日本山岳ガイド協会に所属しなければいけない理由も無いのが事実です。
(中略)
日本でも今ガイドレシオと呼ばれる”ガイドに対する顧客の数”が出ていますがそれを守らなければならない理由も無く、それを無視したからと言って罰せられる事も無いようです。(フランスでは国家資格ですのでガイドレシオを守らない場合は法的に罰せられる事も有りえます。)
日本でガイドレシオのことを語ると、夏山であれば、学校登山についてどのように考えるのか? という問題に行き当たりますね。大集団で夏山の稜線歩きをする。そこにはレシオという概念はありませんので。
百名山ツアーで事故があり、旅行会社が主催する登山ツアーについてはややブレーキが掛かりましたが、トレッキングという概念でみても、大集団過ぎるツアーが横行しています。そして、それを主催しているのが新聞社であったりしますから、問題点が報道されることもほとんどありません。
また冬であれば、観光協会が主催して50人という大集団のバックカントリーツアーを実施、地元のガイドがそれ案内をしています。一昨年、大きな事故があった八甲田でも、相変わらず、同種の大集団のツアーが実施されれています。
専門誌は、これらを「地元の優秀なガイドが案内している安全なツアー」として紹介します。ですから、いつまで経っても、山岳リスクへの適切な理解が進まないのです。これは山岳ガイドにとって重要な「安全のマージン」に関連します。そして、そこへの理解がない限り、下記に書かれている「登らせないのもガイド」ということも、理解されることはないだろうと思います。
【一般登山とガイド登山の違い】
凄く大きな題材です。
(中略)
事実、山岳ガイドとして今活躍するガイドの中でも『あのコンディションで登らせた!』と自慢顔で話すガイドも居ます。これガイドの自己満足です。でもその自己満足を参加者に強制的に参加させる必要は無いと思う。
『登らせるも、登らせないもガイドの仕事』
↑これある人に言われ、その後大切にしてる言葉です。
(中略)
友達となら行くコンディションはガイド登山でも行くコンディションなのかと言う事です。ここの判断が一般登山とガイド登山の明確な判断基準のさかえ目だと思います。
最後の一文がすべてでしょうね。ガイドにとって一番大事なのは、言うまでもなく、事故を起こさないこと。事前と事後に分ければ、事前に関連する事項に対して、具体的なスキルや知識や、それに基づく選択肢を持つことができるのかが大事。
でも、不思議なことに事後のことを強調する人が日本ではとても多い。「レスキュー能力があるか否かが、ガイドであるかないかの差だ」とまで言う方もいらっしゃるようです。これはちょっとズレいますね。ガイド個人ではどうにもならないアクシデントなど多々あるのですから。それに、ガイドの本分は安全に山を案内し、「顧客を山から生きて連れ帰る」ことなのですから。
■ガイド業界の混沌■
「お客がつけばなんでもあり」というカオスにあるのが、今の日本のガイド業の実態。フランスの国家資格持っている江本氏にしてみれば、「勘弁してほしい」と嘆くのも無理ないことかと思います。
一般ユーザーからみれば、賢く&注意深くガイドを選ぶしかない、という状況です。資格自体に信を置けないのですから。また、メディアに載っているからといって良いガイドとは限りませんしね。Backcountry Riding をされる方が行えるRisk Hedge は、ブログやサイトをよく見て、どのようなタイプの方なのかを見抜くことでしょうね。
これまでの経験でいえば、クライミング中心でなおかつ体力&スキル自慢のテイストが匂ってくる古典的山屋体質の方は、Risk に対して「オレの感覚」という話になってしまいがち。人間的には面白くて、体力もあって、いい人であったりはするのですが、自然現象のHazard 認知について、個人的な感覚でやられてもちょっと困りますしね。
一方、snowboard などのプロライダーからバックカントリーガイドを始めている人たちは、自分を大きく見せようと自己宣伝するタイプが多い。自分を大きく見せるのに役立つものは何でも利用しようとしますね。山岳のリスクもその一つ。また、ローカルライダーであることを無意味に強調する。
たとえば「最近は山の怖さをわかっていないライダーが増えているから、事故の可能性が高まっている」と専門誌で嘆いてみせるといった感じですね。残念ながら、事故はほとんど経験者が起こしているのですが・・・・・・。
■ひとつの変化そして指針■
Backcountry Riding の世界で最大のRisk である雪崩については、その教育システムはカナダがとてもよく整理されています。カナダにはCanadian Avalanche Association という非営利団体があり、それを行っています。この何年か、日本では日本雪崩ネットワークという団体がCAA と提携してprofessional course を開催しています。
professional course の入口であるレベル1が募集開始されるようなので、紹介しようと思いましたら、既に、片方のコースは定員に達したようです。これは、ひとつの良い変化なのでしょうね。優れたeducation program を求めている人がいるということなので。
日本雪崩ネットワークのレベル1は、現在の日本の中ではもっとも良いプログラムだと思いますが、これはprofessional のbasic course ですから、早く次のステップであるレベル2の開催が望まれるところです。江本氏が少し書かれている状況判断における人的要因について、非常に良いプログラム化がなされている、と知人のカナダ人が言っていました。
日本のように、山岳エリアの気象や雪崩の情報がない状況では、カナダのような教育システムのほうが合っているのは明らかですので、雪崩については日本雪崩ネットワークが一つの指針となりうるだろうと思います。ただ、山岳ガイドに求められるスキルは多様ですから、他に要素については、非常に前途多難であるので、なかなか厳しいのですが・・・・・・。